機能性表示食品の広告表現は法令の規制を理解して考える

機能性表示食品の広告を考えるにあたり、食品表示基準や景品表示法、健康増進法といった表示・広告を規制する法令の理解は欠かせないものとなっています。消費者のための表示と、売るための広告との間には温度差が生じることが珍しくありません。消費者の指示を受ける表示を行いながら広告の効果を高めるには、法令の規定を理解することが重要です。

機能性表示食品の根拠にかかわる法令

機能性表示食品は、事業者側が自らの責任で訴求ポイントとなる機能を表示する食品です。広告を考えるにあたり、国や都道府県が裏づけを与えたものではない点も重要になります。

機能性表示食品の根拠は食品表示法

機能性表示食品の根拠は食品表示法にあります。同法の4条では、消費者の安全を守り、食品の合理的な選択ができるように食品表示基準の策定を規定しています。したがって、広告に関しても食品表示法の趣旨に沿ったものであることが求められます。

機能性表示食品の届出等に関するガイドライン

機能性表示食品は機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに基づいて届出されています。ガイドラインでは、届出の対象となるか、安全性の根拠が明確かなどとともに、表示についても示されています。ここでは、食品表示基準に沿った適正な表示が求められているのです。したがって、ガイドラインに基づいたパッケージへの表示と広告が異なる表現になることはあり得ません。

景品表示法との関係

食品表示基準とともに注目すべきなのが食品表示法第14条の規定です。これには「この法律の規定は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)の適用を排除するものと解してはならない。」とあります。

つまり、機能性表示食品の広告規制には、景品表示法が大きな意味を持っているのです。事実、食品表示基準が求めている内容について、より具体的な規制が景品表示法にあります。

優良誤認を招く広告の禁止

優良誤認を招く広告とは、実際よりも著しく優れた商品であると誤解させるような広告をいいます。食品表示基準では届け出た機能性表示食品そのものについての表示が規制されていますが、景品表示法第5条では、届け出た機能性表示食品そのものについてだけでなく、他の商品などよりも著しく優れていると誤認させる表示も禁止している点が特徴です。

優良誤認となる広告例

景品表示法の規制から、優良誤認と判断される可能性が高い広告例を見てみましょう。
・届け出にない成分の広告
機能性関与成分として届け出られていない成分名を出して機能性の広告を行うと、当該成分に対する過剰な期待を抱かせることにつながります。そのため優良誤認と判断される可能性が高いです。たとえば、届け出がラクトフェリンだけにもかかわらず、イソフラボンの機能を強調するなどが考えられます。

・必要以上に優れてみえる広告
機能性表示食品ではない食品について、機能性表示食品と紛らわしい商品名をつけたり、機能を強調したりする広告を行えば、実際の商品よりも著しく優れているとの誤認を与えかねません。したがって、優良誤認表示として取り締まりの対象となり得ます。

健康増進法との関係

機能性表示食品の広告には、健康増進法との関係も見逃せません。

誇大広告の禁止

健康増進法では第31条で誇大表示が禁止されています。第1項には「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第3項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。」

条文を見る限りでは優良誤認と同じようにも見えますが、優良という文言は入っておらず、優良か否かを問いません。著しく事実に相違する広告とは、まさに誇大広告そのものをさしています。

誇大広告となる広告

それでは、誇大広告となる表現について詳しく考えます。まず、優良誤認は誇大広告です。優良誤認を招く広告とは、実際よりも著しく優れていると思わせる広告であり、ウソや大袈裟な表現で実際よりも大きく見せることから誇大広告といえます。また、誇大広告は実際よりも著しく優れて見せる広告であることから、同時に優良誤認広告ともいえます。

つまり、機能性表示食品に関する限り、景品表示法と健康増進法がダブルで網をかけている状態です。

薬機法の規制と関連付けるとわかりやすい

優良誤認の禁止や誇大広告で思い浮かぶのが薬機法です。機能性表示食品の広告を考えるとき、薬機法を念頭に置いておけばわかりやすいといえます。

口に入れるモノの広告規制

薬機法は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等についての法律です。医薬品や医薬部外品には服用するものが多く、口に入れる点では機能性表示食品と共通しています。また、外用薬や医療機器であっても成分や仕様が健康に与える影響を考えれば、口に入れるものと同じように広告の適正化が求められるものです。

そのため、広告規制の考え方にも共通するものがあるといえます。薬機法第66条にある「虚偽または誇大な広告」とは、食品表示基準や景品表示法、健康増進法が禁じている広告と同じ種類のものです。

キャッチーな広告は立ち止まって考える

薬機法の対象となる化粧品などの広告では、つい消費者に耳なじみがよいキャッチーな表現を使ってしまいがちです。事実、そのような広告は少なくありません。しかし、キャッチーであればあるほど事実から離れ、誇大広告になる危険性を孕んでいます。このことは、機能性表示食品にもいえることです。キャッチーな表現を使いたくなったら、立ち止まって妥当性を考えてみる必要があるでしょう。

▽まとめ

当該食品のありのままを広告にする

機能性表示食品は、消費者にプラスとなる食品であることを伝えるために機能性を表示します。そこで必要なことは、正しい情報です。その食品におけるありのままの情報が伝わらなければ、機能性表示食品である意味がなくなってしまいます。この大前提は、パッケージの表示だけでなく、広告表現にもいえることです。

広告規制の理解を深めるには、薬機法や景品表示法を知ることが近道といえるでしょう。薬事法管理者の認定試験受験対策講座を検討してみるのも一案です。

▽参考情報

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=425AC0000000070#78
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/150911premiums_1.pdf
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145#1125
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=337AC0000000134#20

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