景品表示法の弁明の機会の付与は課徴金納付命令に欠かせない重要な手続

景品表示法には弁明の機会の付与についての規定があります。この手続は、不利益処分を下す前に、本人の言い分を聞く手続であり、一方的な処分とならないように行政手続法に定められているものです。この手続に進むということは、違法行為があったということであり、景品表示法における弁明の機会について知っておくことは重要といえます。

弁明の機会の付与は不利益処分前の意見陳述手続

弁明の機会の付与は、行政庁が国民に対して不利益処分を行う場合の意見陳述手続のひとつであり、法律の要請で行われる手続です。

意見陳述の手続が必要となる処分の中でも、比較的重い営業許可の取り消し処分などは弁明の機会の付与ではなく聴聞の手続が行われます。これに対し、弁明の機会の付与の手続が適用されるのは、比較的軽い営業許可の停止処分などを行おうとする場合です。

行政手続法に定められた手続

弁明の機会の付与についての基本的な規定は行政手続法にあります。手続の流れは簡素化されており、口頭での弁明を行政庁が認めたとき以外は、書面によって行われる手続です。この場合、行政庁からは提出期限までに相当な期間をおいて弁明書の提出を求める通知がなされます。通知に記される項目は第30条に規定される以下の3つです。
・予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
・不利益処分の原因となる事実
・弁明書の提出先及び提出期限

口頭で行われる場合は、提出先及び提出期限に代えて、その旨と弁明のために出頭すべき日時、場所が通知されます。

通知を受け取ったら、期限に遅れないように弁明書を提出します。その際、証拠となる書面等の提出が可能です。

弁明の機会の有効性

弁明の機会の付与の手続が行われる場合、たとえば営業停止の処分などが予定されている状況です。行政庁においてこうした不利益処分を実行に移す場面では、相応の根拠があると考えられます。つまり、予定を覆すほどの重大な証拠を伴う弁明がなされなければ、不利益処分を避けることは難しく、処分を受ける側にとって、弁明の機会の有効性は乏しいです。

これが、弁明の機会の付与が法律の要請をクリアするために行われる形式的なものだといわれる背景でもあります。

景品表示法における弁明の機会の付与

さて、その弁明の機会の付与ですが、景品表示法にも定められています。

行政手続法の一般原則を具体化する景品表示法の規定

景品表示法に弁明の機会の付与に関する規定が置かれているのは、景品表示法が不利益処分を定める法律だからです。各法律では、不利益処分を行う際の弁明の機会の付与について、行政手続法の一般原則を受けて、当該の法律に適した形で具体的に定める必要があります。

行政手続法に対応する通知に関する条文

行政手続法の規定を受けて、景品表示法では第13条で不利益処分の名宛人となるべき者(相手方)に対する弁明の機会の付与を定めています。続く第14条は、内閣総理大臣によって口頭での弁明が認められた場合以外は弁明書を提出する必要があることの規定です。そして、第15条では行政手続法の第30条に定める3項目を具体的に示しています。

景品表示法の不利益処分は措置命令と課徴金納付命令

景品表示法の違反行為に対する不利益処分としては、措置命令と課徴金納付命令があります。このうち、措置命令については弁明の機会の付与は規定されていません。

措置命令を下すのは消費者庁か都道府県

景品表示法違反に対する措置命令は、消費者庁(内閣総理大臣)か都道府県(知事)が下します。一方、課徴金の納付命令を下せるのは消費者庁(内閣総理大臣)だけです。都道府県(知事)が対応している景品表示法違反で課徴金納付命令が必要となった場合は、消費者庁と協力して消費者庁(内閣総理大臣)が下すことになります。

措置命令と課徴金納付命令の中身とは

景品表示法違反における措置命令とは、違反行為を差し止める命令や違反行為を防止するために必要な措置を講ずる命令などです。違反をやめるように命令することなどは、大きな不利益があるとはいえないでしょう。一方、課徴金の納付命令は直接的に経済的不利益となるものです。したがって、弁明の機会の付与が規定されています。

課徴金の額は、対象となる商品やサービスの売上額の3%です。ただし、相当の注意を怠っていないと認められる場合や、金額が150万円未満の場合は課徴金が課されません。

弁明の機会の付与につながる景品表示法違反

弁明の機会の付与につながる課徴金の対象となる景品表示法違反は、優良誤認表示と有利誤認表示です。

優良誤認表示

優良誤認表示とは、実際の商品やサービスよりも著しく優れたものであると表示したり、事実ではないにもかかわらず、ライバル企業や競合商品よりも著しく優良であると表示したりすることを指します。加えて、不当な顧客の誘引や消費者の選択の妨げになることも要件となっています。つまり、ウソや大袈裟な広告によって消費者が騙されることを防ぐためにあるのが優良誤認表示の禁止規定です。

有利誤認表示

優良誤認表示と似ていますが、有利誤認表示とは、実際には有利ではないにもかかわらず、有利に見せかける表示をいいます。こちらも、実際に騙されそうなものであることが要件です。

たとえば、1ヶ月間に限りキャンペーン期間としてお得なサービスを提供すると広告しておきながら、実際には1ヶ月どころかずっと同じサービスだったケースなどが該当します。

▽まとめ

弁明の機会の付与に至らないことが重要

景品表示法違反となる優良誤認表示や有利誤認表示は、適切な表示や広告を心がけることで避けることができます。ただし、どこまでが適切でどこからが不適切になるのかの判断は難しい部分です。この判断を助けるためには、景品表示法の知識と理解を深めることが近道といえるでしょう。景品表示法についてもカバーしている薬事法管理者の試験対策講座で勉強する手もあります。

▽参考情報

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/faq.html
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/27226/00261704/02_siryo1_keihyokihon.pdf
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=405AC0000000088#182
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=337AC0000000134#84

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