景品表示法の返金措置制度は事業者にも消費者にもやさしい建設的な制度

景品表示法で禁止されている優良誤認表示と有利誤認表示をした場合、課徴金の納付命令を受ける代わりに返金措置を申請することができます。返金措置を申請し実施するのは、課徴金を納付するよりも大きなメリットがあるためです。返金措置のメリットや過去に認定された返金事例など、景品表示法の返金について概要を抑えておきましょう。

景品表示法違反には返金措置があり得る

景品表示法に違反した事実がある場合、返金措置の実施に至ることがあります。

返金措置は課徴金対象行為について検討される

景品表示法で返金措置が検討されるのは、課徴金を課される行為についてとなっています。課徴金とは、景品表示法の第5条に定める優良誤認表示と有利誤認表示の禁止に違反した場合に、主管官庁である消費者庁(内閣総理大臣)によって課される不利益処分です。

返金の最低金額は3%

返金措置は、対象となる商品やサービスを購入した消費者に対して行います。返金する金額は、申し出のあった当該特定一般消費者の購入額の3%以上です。つまり、最低金額は3%となります。この数字を多いと見る意見もあれば少ないと見る意見もありますが、事業者として売上の3%以上を支払うことは、違反行為の抑止力としての効果を期待できるものといえるでしょう。

返金措置は事業者が自身の判断で行う

さて、景品表示法違反をしたことによる返金措置は、法令で義務付けられたものではなく、事業者が自身の判断で行うものです。法令の要請で実施されるのは、国庫に入る課徴金の納付命令であり、各消費者に支払われる返金措置を行うかどうかは事業者に任せられています。

弁明の機会の付与がきっかけ

では、事業者はいつ返金措置の実施を具体的に考えるのでしょうか。優良誤認表示や有利誤認表示を行っている自覚があり、課徴金を課されることを予測しているケースがあるかもしれません。

しかし、一般的には課徴金の納付命令に先立つ弁明の機会の付与をきっかけとします。これは、景品表示法の第10条の規定からも読み取れます。そこには、返金措置の認定を受けられるのが、弁明の機会の付与の通知を受けた者であることが定められているためです。もちろん、返金措置を考えること自体はもっと前の段階からできます。

返金は違反を認める行為になる

返金措置をとることは、優良誤認表示や有利誤認表示をしたことを認め、弁明をしないことを意味する行為です。手続としては、弁明の機会の付与の通知を受けて、弁明書の提出期限までに「実施予定返金措置計画」を内閣総理大臣宛に提出します。この計画には、以下の3つを記載する必要があります。
・実施予定返金措置の内容及び実施期間
・実施予定返金措置の対象となる者が当該実施予定返金措置の内容を把握するための周知の方法に関する事項
・実施予定返金措置の実施に必要な資金の額及びその調達方法

内閣総理大臣は、景品表示法の規定に照らし、問題がない場合に返金措置を認定します。

返金措置をとるメリットとは

では、事業者が任意の返金措置を行うメリットとはなんでしょうか。

課徴金の額が減じられる

まず、返金措置を実施すると課徴金の額が減額されます。課徴金相当額以上の返金を行えば、課徴金の納付命令自体が行われません。経済的には同じように見えますが、事業を行う上では、不利益処分を課されるよりも得策との考え方が少なくないでしょう。

また、返金措置が認定されると、返金措置の実施期間が終って1週間以内とされている結果の報告期限までは課徴金の納付命令を受けることがありません。ただし、認定を取り消された場合は除きます。

自主返納のイメージがよい

課徴金納付命令を受ける事態は、消費者にとってマイナスとなる法律違反を行ったことでイメージの悪化は避けられないでしょう。しかし、任意となっている返金措置を行うことで、イメージ回復につながる期待を持てます。

よりイメージ回復を早めようとするなら、返金措置の認定を受ける前に自主返納することです。少しでも早く返金対応を実施することで、悪化したイメージが薄まる効果を期待できます。認定の申請前や申請後の認定前に自主返納した分についても返金措置の金額にカウントされます。

返金が認定された実例

過去に返金措置が認定された事例を見ておきます。

グリー株式会社の例

2016年12月26日から翌年1月まで約3週間にわたって実施された「超豪華プレゼント年末年始キャンペーン」で、当選本数の表記に誤りがあったことから、ゲーム内通貨について返金措置をとったものです。

三菱自動車工業株式会社の例

三菱自動車工業株式会社では、ekワゴンなどekシリーズにおける燃費試験データ不正による損害賠償の支払いとして実施しています。金額としては、1台につき10万円です。ただし、残価設定クレジットやリースの利用者や過去の使用者はそれぞれの算定方式によります。同社から2016年6月17日に公表された事例です。

日産自動車株式会社の例

日産自動車株式会社の例も燃費試験データに関するものでした。返金の内容も三菱自動車工業株式会社の事例と同様です。対象となっているデイズ、デイズ クルーズが三菱自動車(ekシリーズ)との共同開発であり、三菱自動車製であることが理由として考えられます。

▽まとめ

景品表示法違反が事実なら返金を

景品表示法違反となる優良誤認表示や有利誤認表示をしてしまった場合は、直ちに返金措置を検討し、違反の報告と自主返金を開始することが得策といえます。自主返金のメリットは前述のとおりで、違反事実を報告した場合は、課徴金の額が半分になる規定もあるためです。課徴金ではなく返金を選択することで、損失を被った消費者への補償にもなります。このように、奥が深いのが景品表示法です。より景品表示法に詳しくなるには、薬事法管理者の試験を目指し、対策講座を受ける選択肢もあります。

▽参考情報

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/27226/00261704/02_siryo1_keihyokihon.pdf
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/authorization_list/
http://www.foocom.net/secretariat/foodlabeling/14874/
https://corp.gree.net/jp/ja/customer-support/information/00039/
https://www.mitsubishi-motors.com/important/detailg420_jp/info02.html

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